はじめに:回路図が無くても、依頼はできます
「製品に電子回路が必要になったが、社内に回路設計者がいない」「Arduino(電子工作でよく使われる小型のマイコンボード)で試作までは動いたが、製品にする方法が分からない」——この記事は、そんな回路設計を外注したい発注者の方に向けたガイドです(回路設計の学習方法や求人の話は扱いません)。
回路設計の依頼と聞くと、「仕様書や回路図を用意してからでないと相談できない」と思われがちですが、実際は逆です。「こういう装置を作りたい」という構想の段階から相談できますし、むしろ部品の選定や実現方法の判断は、設計会社と一緒に決めたほうが手戻りがありません。
この記事では、回路設計の依頼でどこからどこまで頼めるのか、相談から納品までの流れ、費用が何で決まるのか、そして依頼先の実績をどう見るかを順に解説します。
📎 組み込み開発全体の外注ガイドはこちら → 組み込み受託開発とは|外注の進め方・費用・選び方ガイド
回路設計の依頼でできること|どこからどこまで頼めるか
「回路設計の依頼」と一口に言っても、頼める範囲にはいくつかの段階があります。
| 依頼の範囲 | 内容 | こんなときに |
|---|---|---|
| 回路設計のみ | 要件から回路図を設計する | 基板化や製造は自社・他社で行う |
| 基板設計・試作まで | 回路図からプリント基板を設計し、試作基板を製作する | 動くものまで一気に確かめたい |
| ソフトまで一括 | マイコンのファームウェア(機器の中で動くソフト)まで含めて開発する | マイコン搭載の製品を丸ごと任せたい |
| 量産まで | 量産設計・部品調達・実装(部品の基板への取り付け)・組み立てまで | 製品として出荷するところまで見据えたい |
反対に、途中の工程だけを切り出した部分的な依頼も可能です。「設計は自社でやったので、試作と評価だけ頼みたい」「設計済みの回路を製造だけ委託したい」という頼み方もあります。
大事なのは、最初の相談時に「最終的にどこまでやりたいか」を伝えることです。試作で終わるのか量産まで行くのかで、部品の選び方(入手性・長期供給)や基板の設計方針が変わるためです。
依頼の流れ|相談から納品までの6ステップ

回路設計を依頼した場合の一般的な流れです。マイコンを含む装置を想定しています。
- 相談:作りたいもの・困りごと・予算感・希望時期を伝える。構想メモやポンチ絵(概要をまとめた略図)で十分
- 要件整理・仕様決定:必要な機能・性能・使用環境を設計会社と一緒に固め、実現方法と部品の方針を決める
- 見積り:範囲(設計のみ/試作まで/量産まで)を確認して金額と期間を確定
- 回路設計・基板設計:回路図の設計 → プリント基板の設計。途中のレビューで認識合わせ
- 試作・評価:試作基板を製作し、動作を検証。問題があれば設計を直して改版し、必要に応じてもう一度試作
- 納品:試作機や評価結果を受け取る。量産へ進む場合はそのまま量産設計・調達へ。設計データ(回路図・基板データ)を納品物に含めるかは契約によって違うため、最初に確認しておきましょう
発注側の仕事が集中するのはステップ1〜2です。ここで伝えた内容が設計の土台になるので、次の章の「伝えると話が早い情報」を押さえておくと、以降がスムーズに進みます。
📎 ソフト開発を含む進め方の全体像は → 組み込み開発の外注の進め方|仕様書がなくても依頼できる流れ
仕様が固まっていなくても相談できる|伝えると話が早い5つの情報

仕様書は無くて構いませんが、次の5つが揃っていると、初回の相談から具体的な話ができます。
- やりたいこと:「何を・どうしたい」を一文で(例:水槽の温度を測って、離れた場所から確認したい)
- 使う場所・環境:屋内か屋外か、電源は取れるか、温度や振動の条件
- 数量の見込み:試作だけか、量産するなら年間どれくらいか(部品選定が変わります)
- 予算感と時期:概算でよいので上限と希望納期
- 参考になるもの:似た既製品、Arduinoなどでの試作品、手描きのスケッチ——何でも判断材料になります
とくにArduinoやブレッドボード(はんだ付け不要の実験用ボード)で動くところまで作ってある場合は、それ自体が何よりの仕様書になります。試作ボードから製品用の回路・基板への置き換えは、よくあるご依頼のパターンです。

回路設計の費用の考え方|何で金額が決まるか
回路設計の費用は「一式いくら」と相場を言いにくく、次の要素で決まります。
- 回路の規模:部品点数、基板の大きさ・層数(配線を通す導体の層の数)
- 要素技術の難易度:無線通信、電源設計、高精度のアナログ計測、モータ制御など、専門性の高い技術が入るほど設計・評価の工数が増える
- 試作と評価の範囲:試作何回分を見込むか、評価・試験をどこまで行うか
- 認証の有無:無線を使う場合の電波法への対応(技適の取得や、認証済み無線モジュールの採用など)、安全規格への対応
- 量産の有無:量産設計・部品調達まで含むか
見積りを取るときは、総額だけでなく「何が含まれているか」を比べるのがポイントです。試作1回分か2回分か、評価はどこまでか——ここが会社によって違うため、総額の大小だけでは比較になりません。
📎 費用の内訳と抑え方の詳細 → 組み込み開発を外注する費用・相場|見積りの内訳と抑えるコツ
実績の見方|「任せてよい相手か」をどう確かめるか
回路設計の依頼先を選ぶとき、いちばん確かな判断材料は実績です。ただし「実績◯件」という数字ではなく、中身を見ます。
- 自社の案件と近い要素技術の実績があるか:無線・電源・センサ計測・モータ制御など、必要な技術の経験
- 回路だけでなく、その先(基板・ソフト・量産)までやった実績があるか:範囲が広いほど、設計段階から製造しやすさ・組み立てやすさを織り込める
- 改良・改版の実績があるか:既存製品の再設計は、ゼロから作るのとは別の難しさがある
サーリューションの例では、農業用の生育監視システムで回路を一から設計し直してセンサの精度とカメラ性能を高め、通信もWi-FiからLTE-M(携帯回線の省電力版)へ変更した事例や、展示会用のデモ機を回路・基板・ファームウェアまで一貫して約1ヶ月で製作した事例を公開しています。
外注先選び全般の考え方は、こちらの記事にまとめています。
サーリューションの回路設計
当社は長野県の受託開発会社で、回路設計を製品化までの一部として請け負えるのが特徴です。
- マイコンやBluetoothまわりのデジタル系から、モータ制御・バッテリ管理・LED照明・電源などのアナログ系まで、幅広い回路の設計に対応
- 回路設計 → プリント基板設計 → 試作(最短12時間) → 実装(部品の基板への取り付け) → 量産・調達まで一社で対応
- マイコンのファームウェア・組み込みソフトまで一括で開発可能。ハードとソフトの境目の調整も当社側で引き受けます
- 部品の入手性・長期供給・製造コストまで配慮した設計
「回路設計だけ」「試作だけ」「評価だけ」の部分的なご依頼にも対応しています。
📎 サービスの詳細 → 回路設計、基板設計など電子機器開発の外注
まとめ
- 回路設計は構想段階から依頼できる。仕様書や回路図が無くても、やりたいこと・使う場所・数量・予算感・参考品の5つを伝えれば話は進む
- 頼める範囲は回路設計のみ〜量産までの段階があり、最初に「最終的にどこまでやりたいか」を伝えるのがコツ
- 流れは相談 → 要件整理 → 見積り → 設計 → 試作・評価 → 納品の6ステップ。発注側の仕事はステップ1〜2に集中する
- 費用は回路の規模・要素技術・試作評価の範囲・認証・量産の有無で決まる。見積りは総額でなく中身で比べる
- 依頼先は実績の中身(近い技術・範囲の広さ・改版経験)で確かめる
サーリューションでは、回路設計のお見積りを無料で承っています。「まだ構想段階」「Arduinoの試作品しかない」という状態からでも、実現方法のご提案からお手伝いします。
よくある質問(FAQ)
Q. 回路図が読めない・書けないのですが、依頼できますか?
A. 問題ありません。「やりたいこと」を言葉や図で伝えていただければ、回路の実現方法はこちらから提案します。打ち合わせも専門用語をかみ砕いてご説明します。
Q. Arduinoで作った試作品を、製品にできますか?
A. できます。試作ボードの構成をもとに、製品用の回路・基板として設計し直すのは、よくあるご依頼のパターンです。量産や長期供給を見据えた部品選定もあわせてご提案します。
Q. 1台だけの製作や、電子工作の延長のような小さな装置でも頼めますか?
A. ご相談いただけます。検査治具や実験用の装置など、1点ものの設計・製作の実績もあります。
Q. 既存製品の回路の一部だけ直したい場合は?
A. 対応可能です。部品の生産終了に伴う置き換え設計や、性能向上のための再設計など、既存回路の改版のご依頼もお受けしています。
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本文中に記載の会社名、製品名、規格名は、各社の商標または登録商標です。
