装置制御の外注ガイド|PLCとマイコンの使い分け・仕様の伝え方・費用の考え方

はじめに:装置の「動かし方」を外に頼むとき、最初に迷うこと

自社の装置にモータやヒーターを組み込み、決まった手順で動かしたい。けれど社内には制御を設計できる人がいない、または手が足りない。そんなとき選択肢になるのが装置制御の外注です。

ただ、いざ相談しようとすると、いくつもの疑問が出てきます。「PLCで組むものなのか、マイコンで作るものなのか」「仕様書がないけれど、何を伝えればいいのか」「費用はどう決まるのか」。この記事は、こうした発注前の疑問に順番に答えていきます。

先に結論をまとめると、次の3点です。

  • 装置制御にはPLCで組む方法とマイコンの専用基板で作る方法があり、台数・装置の大きさ・変更の頻度で向き不向きが分かれる
  • 外注先に渡す情報は、7項目の「仕様メモ」にまとめれば、正式な仕様書がなくても相談を始められる
  • 費用は「何台作るか」「どこまで任せるか」「安全や評価をどこまでやるか」で大きく変わる

📎 組み込み開発の受託全体の流れを先に知りたい方はこちら → 組み込み受託開発とは|外注の進め方・費用・選び方【ハードもソフトも一社完結】


装置制御とは|外注で頼めるのはどこまでか

装置制御とは、センサやスイッチから入ってきた情報をもとに、モータ・ヒーター・ソレノイド・ファンなどを決められた手順とタイミングで動かすしくみのことです。温度を一定に保つ、回転数を合わせる、扉が閉まったら動き出す、といった動作がすべて制御にあたります。

📎 制御そのものの考え方は、身近な例で解説したこちらの記事が入口になります → 制御機能とは?身近な例でわかりやすく解説

外注で頼める範囲は、次の5つに分けて考えると整理しやすくなります。

範囲 中身 外注先によって
制御の構想 何をどの順番で動かすか、方式(PLCか専用基板か)を決める 相談段階から一緒に考える会社もある
ハード設計 回路設計・プリント基板設計・電源やモータドライバの選定 対応する会社としない会社に分かれる
ソフト設計 マイコンのファームウェア(機器の中で動くソフト)やPLCのプログラム 会社ごとに得意な方式が違う
試作・評価 試作機を組み、実際の装置につないで動作を確かめる 自社で試作できるかで速度が変わる
量産・保守 量産用の基板製造、部品調達、改版や不具合対応 試作までで終わる会社もある

発注側が「ソフトだけ頼みたい」と思っていても、実際にはハードの選定やつなぎ込みで問題が見つかることもあります。どこからどこまでを一社に任せるかを最初に決めておくと、後の手戻りが減ります。


PLCとマイコン制御の違い|装置に合うのはどちらか

左に設備を動かす大きな制御盤、右に装置の中に収まる小さな専用基板と、同じ機器を何台も作る様子を対比した図

装置制御の方式には、大きく分けてPLC(プログラマブルロジックコントローラ)とマイコンを載せた専用基板の2つがあります。

  • PLC:工場の生産設備でよく使われる、制御専用の汎用機器です。入力と出力の端子を持ち、プログラムを書き換えて動作を決めます。メーカーが販売する既製品の中から選んで使います
  • マイコン制御(専用基板):装置のために回路と基板を設計し、そこにマイコン(小さなコンピュータ)とファームウェアを載せて制御します。装置の中に収まる「専用の頭脳」を作るイメージです

どちらが優れているというより、装置の性格によって向き不向きがはっきり分かれます。

観点 PLC マイコン制御(専用基板)
向いている台数 1台〜少数の設備 同じ装置を繰り返し作る製品
1台あたりの部品コスト 機器代がかかりやすい 台数が増えるほど下げやすい
大きさ 盤や設置スペースが必要 装置の中に小さく収められる
現場での変更 プログラムを現場で書き換えやすい 変更はファームウェアの更新で行う
作り込みの方法 用意された機能やユニットを組み合わせて実現する 回路から装置に合わせて作り込める
初期の開発 既製品を使うため始めやすい 回路・基板の設計から入るため初期の開発がある

ざっくり言えば、工場の中で1台を動かす設備ならPLC、製品として何台も出荷する装置ならマイコンの専用基板が候補になりやすい、という使い分けです。


判断の目安|こんな装置ならマイコン(専用基板)が候補

迷ったときは、次の質問に答えてみてください。「はい」が多いほど、マイコンの専用基板が合う装置です。

  1. 同じ装置を毎年何台も作る予定がある
  2. 装置の筐体の中に制御部を収めたい(盤を別に置きたくない)
  3. 1台あたりの部品コストを下げたい
  4. 液晶表示・ボタン・ブザーなど、操作部まで含めて作り込みたい
  5. モータの回転数や温度を細かく、なめらかに制御したい
  6. 電池やUSBなど小さな電源で動かしたい
  7. 装置の外とシリアル通信やネットワークでつなぎたい

反対に、「1台限りの設備で、現場の担当者がプログラムを直したい」「既存ラインのPLCに機能を足したい」といった場合は、PLCで組む方が自然です。

たとえば、研究室で使う攪拌機や温度を保つ加熱装置、空調のファンユニットのように、製品として繰り返し作られ、筐体の中に制御部を収めたい装置は、この目安に多く当てはまります。


外注先に何を伝えるか|装置制御の仕様は「仕様メモ」7項目から

手書きのメモから、動かす装置・モータ・温度・異常時の動き・速さ・電源・現物の写真の7項目へ線が伸びる、仕様メモの図

装置制御の外注でよく聞く悩みのひとつが「仕様書がない」ことです。正式な仕様書は、外注先と相談しながら固めていくものなので、最初から完璧である必要はありません。ただし、次の7項目をメモにしておくと、相談の質と見積りの精度が大きく上がります。

# 項目 書く内容の例
1 装置の目的 何のための装置か、誰がどこで使うか
2 動かすもの(出力) モータ(種類・台数)、ヒーター、ソレノイド、ランプ、ブザーなど
3 見るもの(入力) 温度・圧力・位置などのセンサ、スイッチ、ボタン
4 動作の手順 「スタートを押す→温度が○℃になるまで加熱→攪拌開始」のような流れ
5 操作と表示 ボタンの数、液晶表示の有無、表示したい内容
6 外とのつながり パソコンやPLC、上位システムとの通信の有無と方式
7 条件と制約 電源、使用環境(温度・ほこり・水)、大きさ、台数、予算、希望納期

手書きのメモや、既存装置の写真、似た装置のカタログでも十分に伝わります。特に4の動作の手順は、箇条書きで「こうなったら、こうする」を並べるだけでも、制御の骨組みがほぼ見えます。

📎 相談から納品までの流れと、仕様書なしで依頼できる理由はこちら → 組み込み開発の外注の進め方|仕様書がなくても依頼できる流れ


仕様で揉めやすい3つのポイント

装置制御の外注で、後から食い違いが起きやすいのは次の3点です。相談の早い段階で確認しておきます。

1. 異常時の動き

正常に動くときの手順は誰でも書けますが、センサが壊れた、温度が上がりすぎた、停電したといった異常時に装置がどう振る舞うかは、書き漏れやすい部分です。止めるのか、警告だけ出すのか、再起動したらどうするのか。装置の安全に直結するため、相談の早い段階で発注側と外注先で取り決めておきます。外注先からも起こりうる異常を挙げてもらい、そのとき装置をどう振る舞わせるかを発注側が判断する形にすると、漏れが減ります。

2. 精度と応答の速さ

「温度を一定に」と言っても、±1℃なのか±0.1℃なのかで、選ぶセンサも制御の作り込みも変わります。どれくらいの精度で、どれくらい早く追いつけばよいかを数字で伝えると、過剰な設計も不足も防げます。

3. 検査と合格の基準

何ができたら完成とするかを、検査の方法とセットで決めておきます。「○時間連続で動かして異常がないこと」「設定温度に○分以内で到達すること」のように、確かめられる形にしておくと、納品時の行き違いがなくなります。

📎 外注全体で起きやすい失敗10個と、発注前のチェックリストはこちら → 組み込み開発の外注でよくある失敗と防ぎ方【チェックリスト付き】


装置制御の外注費用はどう決まるか

費用の金額は装置ごとに大きく違うため、ここでは費用を左右する要素を整理します。見積りを比べるときも、この要素ごとに内訳を見ると違いが分かります。

要素 費用への効き方
制御する対象の数 モータやヒーター、センサの数が増えるほど回路もソフトも増える
制御の難しさ 単純なオン・オフか、PID制御(目標値に近づけ続ける制御)など細かな作り込みが要るか
ハードを新しく作るか 既存の基板を使うか、回路・基板を新規で設計するか
操作部と表示 液晶やボタンの画面設計まで含めるか
通信 外部機器との通信方式の数と、通信手順の作り込み
評価の範囲 試作機での動作確認、連続運転、環境試験をどこまで行うか
台数 試作数台か、量産まで見込むか(量産なら1台あたりの部品コストを下げる設計が効く)

費用を抑えるコツは、最初の試作で全部を入れようとしないことです。まず中心となる動きだけを試作で確かめ、表示や通信などは次の改版で足すと、手戻りの費用が膨らみにくくなります。

📎 規模別の考え方や見積りの内訳はこちらで詳しく解説しています → 組み込み開発を外注する費用・相場|見積りの内訳と抑えるコツ


装置制御の外注先の選び方|確認したい4つの点

装置制御の外注先は、次の4点を確認すると絞り込めます。

  1. 得意な方式:PLCが中心の会社か、マイコンの専用基板が中心の会社か。前の章の判断表で決めた方式に強い会社を選ぶ
  2. ハードとソフトの一括対応:制御の不具合は、回路とソフトのどちらに原因があるかの切り分けから始まる。一社で両方を見られると、切り分けが早い
  3. 近い装置の実績:モータ制御、温度制御、通信など、自社の装置に近い要素技術の経験があるか
  4. 試作の速さ:制御は実機で動かして調整する工程が欠かせない。試作と改版を短いサイクルで回せるか

📎 大手と専門会社の違いや、チェック項目7つはこちらで詳しくまとめています → 組み込み開発の外注先の選び方|大手と専門会社の違い


サーリューションの装置制御|マイコンと専用基板で作る

中央のマイコン基板からモータ・ヒーター・ファン・照明の4つへ制御の線がつながる図

サーリューションは長野県伊那市の受託開発会社で、マイコンを使った専用基板による装置制御を、回路設計から基板製作、ファームウェアまで一社で手がけています。

  • 回路設計・プリント基板・マイコンファームウェア・組み込みソフト・機構3D設計・IoTまで一社で対応
  • 10種類以上のマイコン(Renesas・Microchip(PIC・AVR)・Nordic・STMicroelectronics(STM32)・Silicon Labs・TI など)から、装置に合うものを選んで開発
  • プリント基板の試作は最短12時間・1点2万円以下から。試作と改版を短いサイクルで回せる

これまでの制御の開発では、AC・DC・ステッピングの各種モータ、ヒーター、ソレノイドを対象に、PID制御・ベクトル制御・充放電制御などを組み込んできました。遠心器、ホットスターラー(加熱しながらかき混ぜる実験装置)、攪拌機、ファンユニット、照明制御、ドラフトチャンバー、吸排気検査機などが開発の例です。通信もRS-232C・RS-422・RS-485・CAN・MODBUS・Ethernetなどに対応しています。

📎 対応するマイコンと開発実績の一覧 → マイコンファームウェア・組み込みソフトウェア設計開発
📎 PID制御・ベクトル制御などモータ制御の事例 → マイコンによるモータ制御の開発事例5選|PID制御からベクトル制御まで
📎 産業機器の通信の事例 → マイコンによる産業機器向けMODBUS通信開発事例5選
📎 回路設計からのご依頼 → 回路設計・基板設計


まとめ|装置制御の外注は「方式」と「仕様メモ」から

  • 装置制御の外注範囲は構想・ハード・ソフト・試作評価・量産保守の5つ。どこまでを一社に任せるかを先に決める
  • 1台の設備ならPLC、繰り返し作る製品ならマイコンの専用基板が候補になりやすい
  • 仕様書がなくても、仕様メモ7項目(目的・出力・入力・手順・操作表示・通信・条件)があれば相談を始められる
  • 異常時の動き・精度・検査基準の3つは、早めに決めておくと揉めない
  • 費用は対象の数・制御の難しさ・ハードの新規性・評価範囲・台数で大きく変わる。最初の試作は中心の動きに絞る

組み込み開発の受託全体については、組み込み受託開発とは|外注の進め方・費用・選び方【ハードもソフトも一社完結】にまとめています。

「この装置、マイコンで作れるだろうか」「手書きのメモしかない」という段階でも構いません。お見積りは無料です。装置の目的と動かしたいものを教えていただければ、方式の検討からご一緒します。

📎 お問い合わせはこちら


よくある質問(FAQ)

Q. 既存の装置の制御基板だけを作り直すことはできますか?
A. 既存装置の制御基板の作り直しもご相談いただけます。既存装置の配線や動作を確認したうえで、回路・基板とファームウェアを新しく作る形になります。元の図面がない場合は、現物の調査から始めることになるので、相談時に図面の有無をお伝えください。

Q. PLCとマイコン、どちらにするか決めていなくても相談できますか?
A. できます。台数・大きさ・変更の頻度など、本記事の判断表の内容をお聞きしながら方式を一緒に検討します。方式が決まっていない段階こそ、早めの相談が後の手戻りを減らします。

Q. 試作1台だけでも依頼できますか?
A. 試作段階からのご相談をお受けしています。まず試作で中心となる動きを確かめ、その結果を見て量産に進むかを判断する進め方が、費用の面でも無駄がありません。

Q. ソフトだけ、基板だけといった部分的な依頼はできますか?
A. 部分的なご依頼も可能です。ただ、装置制御の不具合は回路とソフトのどちらにも原因がありうるため、どこまでを一緒に見るかは相談の中でご提案します。


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